FREESTYLE 狂想曲・2
さて、いよいよ入場です。
会場の入り口に立つと、関係者各位から贈られた沢山の花の、むせかえるほどの匂いが華々しさを盛り上げ、いやがうえにも高揚感と、これから始まる事への期待感を高めます。
入ってすぐ、左右に並べられたフィギアの数々は圧巻。
これが、作品集で見るよりもずっと精巧に出来ているのにびっくり。ちょっとした感動です。え?こんな細かいの?うっわ~うっわ~!この眼鏡のつるは何で出来てるの?どうやって曲げたの?まつげ、これ植えてるの?帽子のつばの角度はどうやって固定したの?このレゲエ風の帽子は自分で編んだの?みつ編みは?へ~、この紐、ちゃんとドレッドに見えるなぁ。この羽って、もしかしてルアーの?うわ、この煙草、超リアル!
見るもの見るもの、すべてのフィギアにそんな驚きや疑問が湧いてきて、横から覗き込んだり、下から見上げてみたり。
少し前にも書きましたけど、やっぱり帽子の造形がすごく丁寧でいいんですね。つばのラインとか、キャスケットのギャザーとか、被ってる角度とか、しわの感じや、ただ「帽子」という形を作って被せているのではなくて、ちゃんとかっこいいスタイルになってる。ふだん大野君が被ってる帽子といえばキャップしか思いつきませんけど、こんなにも帽子の形を思いつくだけでもすごい事だと思います。そうそう、帽子に小鳥が止まってるのもあったな。それ、可愛かった。
本当に、どれを見てもその精巧さには「すっげーな!」の一言なんですが。見てるとね、なんか笑いがこみ上げてくるんですよ。くっくっくっ、って。感動する、っていうよりも「ばっかだなー、大野智!(笑)」と思いながら見てました。真夜中になにやってんだ、と。他人に見せることも、どっかに応募する事も前提とせずに、本当に自己満足のためだけに、よくぞここまでやってくれたよ、と。
イラストのコーナーは、やはり作品集で見るよりも肉筆の放つオーラ、みたいなものがあって。圧倒されます。ちょっとこれらはフィギアを見るような「ばっかだなー(笑)」目線では見られなかったです。
紙に描いてるとばかり思っていたそれは木だったり、紙であっても後から継ぎ足し継ぎ足しして書かれていたり。こういうところにも大野智という人のこだわりのなさ、みたいなものが感じられて面白かったです。
ふつう絵を描こうと思ったら、まず描きたいモチーフがあって、どのくらいの大きさで描こう、と考えたら、その大きさの紙なりキャンバスなりを買いに行くのがふつうじゃないかと思うんですが、手元にある紙をつなぎ合わせて必要な大きさにするって・・・。しかもそんなテキトーなものに、あんな気合の入った絵を描いちゃう・・・。もったいないじゃん?と思ってしまうわけですよ。こちとらシロートは。こんなにちゃんと描くんなら紙も最初からちゃんとしたもの使えばいいのに!でもそういう気負いのなさが大野智なんですね。
サングラスにストライプ柄のジャケットの黒人や、クライスラービルと警官、緑のゴリラ、らくだ、派手なシャツでくわえ煙草の黒人、あたりの絵がファンの人たちには人気のようでしたが、私はそういった彩色が施されたものよりも、単色で、割とラフに描かれた作品の方が魅力的にも見えたし、興味がもてました。彼の力量というのか、しなやかさ、みたいなものは、わりとこっちに表れているような気がします。
ただ、宇宙服を着たサルの絵には引き込まれるものがありました。
正確に言えば、そのサルの瞳に引き込まれた、という方が正しいかもしれない。これは多分、以前出演した「はなまるマーケット」でちらっと映ったそれじゃないかと思うんですが、そのときから「この絵の完成したのが見たい」と思っていたのに、作品集にも載っていなかったので、完成しなかったんだろうか、と思っていました。
でも、この絵を描くに当っては既存の写真をモチーフにしているらしいので、おそらくは著作権云々の兼ね合いだと思います(作品展示については許可を得ているそうです)。
このサルの瞳がいいんですよ、ほんとうに。目が離せなくなってしまうような魅力があります。
そして「タツノオトシゴ」ですよ。
この絵だけ見たら、大野智という人間は「偏執狂」じゃないか!?と思う人もいるかもしれない。ちょっと見ようによっては狂気を孕んだ感じにも見えなくない。気ぃ狂いそうな精密さです。(グッズのTシャツは、その細かいとこが全部つぶれちゃってて残念)
でも、その細かさにひるまないで、端の方からじっくり見ていくと、大野君が「1ヶ月半の日記」というように、さまざまなモチーフが散りばめられていて、やっぱりこれも「ばっかだなぁ~(笑)」って感じです。
門松らしきものが描いてあって、あれ、これってGRAのお正月研究会の頃なのかな?とか、この頃は「釣りに行きてぇなぁ~」なんて思ってたのかな、とか、パイレーツ・オブ・カリビアンでも観たのかな?とか。いろいろ想像を巡らせるのも楽しい。
びっくりするほど精密に描かれた魚の絵があったかと思うと何故かお尻丸出しの人が整列してる絵があったり。リアルに描かれた猿の頭の下には、やはりリアルに描かれた鳥の足だったり。
こんな細かい線、何で描いたのかなぁ。ロットリングの1番細いのかな、それとも丸ペン?なんか、自分もやってみたいなぁ、という気持ちになってしまうわくわく感があります。絵を描くのが好きな人なら、この「日記みたいな絵」自分もやってみたいと思ったんじゃないでしょうか。
今回、ひとつの目玉でもあったはずのグラフィティ・アートは、これを3日で仕上げたのかという驚きはあったのですが、欲を言えば、せめて1週間あれば、大野君ならもっといい仕上がりに出来たのではないか、という気が否めません。なんというか、ちょっと大味な気がする。
こういうものはあまり微にいり細にいり描くような類のものでないのでしょうけど、なんだろう、地色と文字のコントラストが弱いのかな。大きさは充分だと思うんですけど、想像していたほどの迫力が伝わってこないなぁ、というのが正直な感想。でもこれはやっぱり時間不足が原因だと思います。もっと時間を上げたら、もっといいものが出来たはず。
私も絵が好きなので、美術館や展覧回の類には足を運ぶ事もありますが、こんなに食い入るように作品を見たことははじめてかも(笑)
やはり、写真や複製では作品の持つパワーは伝わりにくいのです。画集や作品集を見ていいと思ったのなら、実物はさらにその何倍ものオーラで何かを語りかけてくるものです。
大野君の個展も残すところあと数日ですけれど、できるだけ多くの人に見てもらいたい。
そして、Jストさんには地方巡業の実現と、東京の再開催を強く望むものであります。
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